プロ野球人事部の独自指標(改訂版)について


 
1.基本的な考え方

前回の独自指標に対しては、多数の疑問・反対意見を頂戴しました。
また、自分でも攻撃ポイント、投手ポイントの数値がピンとこなかった為、野球選手を評価する指標を再考しました。

野球は攻撃と守備に大別でき、それぞれで求められる結果が大きく異なります。

攻撃(打者、走者)
 1.1つでも多く塁を奪うこと(得点はその結果です)
 2.アウトにならないこと(攻撃を継続することが勝利への近道です)

守備(投手、守備)
 1.1つでも多くアウトを奪うこと(守備を終了させる為の近道です)
 2.出塁、進塁させないこと(失点回避はその結果です)

野球の公式記録を用いて評価することが難しいのは走者と守備です。
走者としての実績は、盗塁の成功/失敗と得点数が公式記録から得られますが、進塁数が得られず、走者としての評価は困難です。
守備も、守備率や補殺数、刺殺数は得られますが、それらの数値から守備貢献度の測定は不可能です。

反対に打者と投手としての評価は概ね可能です。
 打者は、奪塁数(塁打数+四死球数+盗塁数)、被アウト数(打数−安打数+併殺打数+盗塁失敗数)
 投手は、奪アウト数(投球回数)、与塁数(安打以外の出塁数+塁打数)、対戦打者数
上記により、不完全ではありますが基礎数値が得られます。

なお、犠打、犠飛、投球妨害、走塁妨害は被アウト数や与塁数には含みません。
前回指標は勝利への貢献度を計測するものでしたが、今回は打撃実績と投手実績を計測するもの、という観点の違いによるものです。

 
2.評価方法 2015. 7.11更新

攻撃に求められることは塁を奪うこと、守備に求められることはアウトを奪うことです。
塁を奪わなければ得点は出来ませんし、アウトを奪わなければ試合は終わりません。 今回の指標は この視点での評価に特化します。

(1-1)野手の攻撃実績
 打席に立った結果は、出塁すれば成功、アウトになると失敗です。
  成功の度合いは、塁打数と四死球数で計測(=長打は大成功、四死球や単打は成功)
  失敗の度合いは、アウト数で計測(=併殺打は大失敗、アウトは失敗)
 走者も同様に、成功は盗塁数、失敗は盗塁死の数で計測します。

 攻撃ポイント = (塁打数 + 四死球数 + 盗塁数)−(併殺打数 + 盗塁死数)

(1-2)投手の投球実績
 打者と対戦した結果は、アウトを奪えば成功、出塁させると失敗です。
  成功の度合いは、アウト数で計測
  失敗の度合いは、被安打数と四死球数で計測

 投手ポイント = アウト数 − (被安打数 + 四死球数)

(2-1)野手の攻撃能力
 攻撃実績は、打者または走者として塁を奪った数を数値化しました。
 能力評価は、塁を奪う効率を「1アウトになるまでに奪える塁数」として数値化します。

 奪塁力 = 奪塁数 ÷ 被アウト数 = (塁打数 + 四死球数 + 盗塁数) ÷ (打数 − 安打数 + 併殺打数 + 盗塁死数)

(2-2)投手の投球能力
 投球実績は、出塁させずにアウトを奪った数を数値化しました。
 能力評価は、アウトを奪う効率を「打者1人を塁に出すまでに奪えるアウト数」として数値化します。

 奪死力 = アウト数 ÷ 被出塁数 = アウト数 ÷ (対戦打者数 − アウト数)

 
3.攻撃ポイントとは 2015. 8.15更新

攻撃ポイントの評価対象となるのは、以下の2点です。

1.打席に立った結果
 (1)自らの打撃により出塁できた場合は成功と判定し、奪った塁数を加算します。
  安打  ・・・ 塁打数(単打は1、二塁打は2、三塁打は3、本塁打は4)を加算
  四死球 ・・・ 四死球1回につき1を加算

 (2)出塁できなかった場合は失敗と判定し、失敗の程度により減算します。
  併殺打 ・・・ 自らがアウトになる以上に攻撃機会を失ったので、1減算
  凡退  ・・・ 自らがアウトになった場合は失敗であるが減算しません(3割バッターでも7割は凡退する)

 (3)その他の場合は成功・失敗の判定はしません。
  犠打  ・・・ チームの作戦遂行上は成功であるが、多くのケースでは得点期待値を下降させるため、加算対象としません
  犠飛  ・・・ チームは得点を記録するが、多くのケースでは得点期待値を下降させるため、加算対象としません
  打撃妨害 ・・・ 打者の功績であるか否かが判然としないため、加算対象としません

2.盗塁を試みた結果
 成功した場合は1を加算し、失敗した場合は攻撃機会を失わせたため、1減算とします。

 
4.奪塁力とは 2015. 8.15更新

奪塁力は、1アウトになるまでに奪うことが出来る塁数を計算したものです。
具体的には、奪った塁数(=塁打数+四死球数+盗塁数)をアウト数で除します。

野手は1試合で4〜5回打席が回ってきますが、4つのアウトを喫する場合に奪塁力が「1.00」であれば、その試合で奪える塁数は、
奪塁力1.00×4アウト=4塁 となります。
4塁は得点1点分の価値がありますので、奪塁力1.00以上の打者は(かなり乱暴ですが)自分の打席だけで1試合に1得点計上する
能力があると言い換えることも可能です。
当サイトでは奪塁力1.00以上の打者は、非常に高い攻撃能力を有していると評価します。

 
5.投手ポイントとは 2015. 8.15更新

投手ポイントの評価対象となるのは、1点です。

1.打者との対戦結果
 (1)アウトを奪った場合は、対戦に勝利したと判定し、アウト数1につき 1加算します。
  アウトは打者の凡退によるものだけでなく、走者の盗塁死やけん制死、守備妨害、犠打、犠飛、被安打五のプレー中の刺殺など、
  打者との対戦に勝利した以外のアウトも含まれてしまいます。
  しかし、投手への期待への第一はアウトを記録させることなので、アウトの内容に関わらず、アウト数を評価対象とします。

 (2)自らの責任で出塁させた場合は失敗と判定し、1減算します。
  被安打  ・・・ 被安打1につき、1減算(打者との対戦結果の失敗判定なので、長打か否かは勘案しません)
  与四死球 ・・・ 四死球1につき、1減算

 (3)その他の場合は成功・失敗の判定はしません。
  ボーク、暴投、失策、野戦、走塁妨害などは、打者との対戦結果の評価対象外とし、加減算しません。

 
6.奪死力とは 2015. 8.15更新

奪死力は、打者1人を塁に出すまでに奪えるアウト数を計算したものです。
具体的には、奪ったアウト数を出塁させた打者数(=対戦打者数−アウト数)で除します。

この場合の出塁させた打者数は、失策、打撃妨害、野戦など投手の責任範囲外である可能性のあるケースも含まれてしまいますが、
アウト数の計算も同様(=投手の功績以外のアウト数も含む)であることと、ゲームメイク力が要求されるのが投手というポジション
であるという観点から、計算式に多くの要素を反映させることとしました。

これは、例えば守備が穴だらけである場合、エラーは投手の能力とは無関係とするのではなく、自チームの守備力や攻撃力も含め
相手と対するのが投手であるという価値観に立つものです。(セイバーメトリクスで主流の価値観とは異なります)

奪死力が「3.00」以上であれば、打者を塁に出す前に3アウトを奪えることとなり、相手に得点を与えないピッチングが期待できます。
したがって、当サイトでは奪死力3.00以上の投手は、非常に高い能力を有していると評価します。

 
7.攻撃ポイント、投手ポイントの評価 2015. 8.15更新

当サイトが設定した攻撃ポイントと投手ポイントの、評価指標としての有意性を検証します。

検証したい点は、攻撃ポイントの高低はチーム得点に、投手ポイントの高低はチーム失点に、それぞれ影響があるのか否かです。
2005年から2014年までの12球団のチーム成績データ(12球団×10年間=120件)を使用します。

1.攻撃ポイントと得点数 (相関係数は「0.958」で、非常に強い関係があります)

※相関係数とは、2つの要素が関連する度合を測るもので、−1〜+1の範囲にある数値で表現され、+1あるいは−1に近いほど、
 強い関係にあると判断されます。(一般に、0.7以上 または -0.7以下の場合は強い関係があると評価)

2.投手ポイントと失点数 (相関係数は「-0.858」で、非常に強い関係があります)

※相関係数がマイナスの値をとるのは、失点を与えると投手ポイントが下がるため

3.攻撃ポイント+投手ポイントと勝利数 (相関係数は「0.805」で、非常に強い関係があります)

4.攻撃ポイント+投手ポイントと得失点差 (相関係数は「0.817」で、非常に強い関係があります)

攻撃ポイントと投手ポイントは、得点と失点の大小だけでなく、得失点差や勝利数と強い関係を持っていることが判りました。
このことから、投手ポイントが高い投手と攻撃ポイントが高い野手は、チーム成績への貢献度が高いと考えることが出来ますので、
評価指標としては有意であると評価することが可能と考えます。

 
8.奪塁力、奪死力の評価 2015. 8.15更新

前項と同様に、奪塁力と得点、奪死力と失点の関係をみてみましょう。
データは、2005年から2014年までの12球団のチーム成績データを使用します。

1.奪塁力と得点数 (相関係数は「0.945」で、非常に強い関係があります)

2.奪死力と失点数 (相関係数は「-0.928」で、非常に強い関係があります)

奪塁力と奪死力も、得点と失点と強い関係を持っていることが判りました。
このことから、奪塁力が高い野手と奪死力が高い投手も、チーム成績への貢献度が高いと考えることが出来、評価指標としては有意
であると評価することが可能と考えます。


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